このシリーズの第1回で海外生活を送るとした場合、一番先に考えておかなければならないのは、 治安、医療、言葉もさることながら「お金」だと書きました。今回はそのお金について少し 詳しく説明してみましょう。
よく、「日本はG.D.P(国内総生産)世界第2位で、国民所得も高いというけど、
海外に行くと所得が10倍でも実感としてはせいぜい2〜3倍にしか感じないのは何故か。」
といった質問を受けます。この回答として昔から、そして最も多いのが「日本人は金持ちだから
ボラれている」とか「外国だから貨幣感覚がマヒして大盤ふるまいしてしまうからだ」と
いったものです。結論から言うとこうした答えは、一部の観光土産品などにあてはまっても、
海外生活という日常化を前提とした場合にはあまり説得力のある説明とは言えません。
では、この「理論と現実の差」はどうして起きるのでしょうか。
まず、G.D.Pと国民所得についてみてみましょう。前述した通り、日本のG.D.Pは
アメリカについで世界第2位です。しかし、一人当たりとなると9位(2003年暦年)に
下がります。これに、その国や地域の物価、特に衣・食・住といった生活関連物価の高低が
関わってきます。例えば、土地の狭い香港は、東京よりも住宅費が高いことをご存知でしょうか。
同じ広さの部屋を借りようとすると、東京の1.2〜2倍かかります。対する所得は逆に
2分の1〜3分の1程度です。この為、単身者などの多くはルームシェアといって、共同で
部屋を借りたり、街の中心部から離れたところに借りたりしているのが実情です。
この香港のように、住宅費が所得の半分近くを占めるというのは稀ですが、総じて「理論」より
「実務」の方がお金がかかるのも事実です。
例えば、アジアのロングスティ先として人気のあるマレーシアのタクシ−の
例でみてみましょう。
クアラルンプールのタクシー初乗りは約60円ですが、実際にはメーターより交渉であったり、
ターミナルでの割高なクーポンチケット制などがある為、200〜400円になることもしばしばです。
また、日本人1人当たりG.D.Pはマレーシアの約10倍近いのですが、
実生活となると冒頭の「実際」でも触れた通りそれ程の差はありません。
このことを朝食を例にもう少し詳しく説明しましょう。
普通、朝食と言えば日本ならご飯に味噌汁、これにおしんこと玉子、
納豆、のり、焼魚といったところですが、現実はトーストにコーヒー、
せいぜいこれに玉子焼とジュースといったところでしょう。いやいや立ち食いそばやマックの
朝食セットなんて人もいるかもしれません。この場合、朝食代って、200〜400円程でしょうか。
でもアジアの普段の生活では屋台でのおかゆや豆乳といったところが定番。
共働きが多いことや家屋の構造もあって伝統的に外食が中心。これだと100〜300円程で
日本と大差ありません。外食の方がお金がかからないというのは日本と反対です。
もちろんこの場合、屋外だからエアコン代はかかりません。
常日頃の私達の忙しい朝食を頭に入れつつ、「はて実際はどれくらいかかるのか」と考えると、
こうした目にみえないコストだけでなく、5分で朝食を取らねばならない通勤事情、習慣や
文化の違いによる食生活の差も考えねばなりません。
また、住宅費などは日本人がアジアに住宅を求めようとする場合、セキュリティーの確保等の
問題もあり、平均的な地元の人達の3〜4倍にならざるを得ないのも現実です。
海外生活のプランをたてる場合は、この辺りも含めて考えないと、当初予想より高かったり
一喜一憂することになりかねません。海外旅行は「非日常」ですが、海外生活は「日常化」なのです。