海外ロングスティという場合の対象者の中心が定年退職後の主に年金生活者で あることは著者も含め、今更、論を待ちません。しかし、将来はともかく、昨今の ロングスティの中核は、実は夫婦でのんびり過ごそうという層ではありません。 同じシニア層でも最近の傾向は少し趣きを異にしています。今回はそうしたちょっと 違ったロングスティの実情を紹介します。
長い間、テレビの英会話や中国語講座を視聴したり、語学スクールに通って
きたが、どうしても外国人と気軽に会話できるようにはならなかった。
定年を機に思いきって語学留学をしてみよう、といったシニア留学生が増えてきています。
これは語学だけではなく、料理や絵画といった趣味の領域でも出てきており、イタリアや
フランスへ3〜6ヶ月滞在して勉強するといった人も確実に増えてきているのです。
また、上海、広州、東莞、深センといったところの日系企業とそこに駐在する日本人のうち
定年を迎えた人や近い将来、定年を迎えようという人達がそのまま現地企業に就職したり、
他の日系企業に転職するといったケースも目立ってきています。
今更、日本に帰って自分の居場所探しに苦労するくらいなら、深刻な人手不足、技術者不足
が続く中国で自分の存在を認めてもらった方がまし、という思いなのでしょう。

シニア層だけではありません。ちょっと違ったロングスティは最近は若い女性などにも 及んできています。上海や大連などで働く、日本の若い女性が増えてきていることは、 企業買収で名をはせたライブドアが、コールセンターを大連に設け、ここに日本人を採用 したことで少しは知られるようになってきました。都内にかけた電話を、格安になった 通信回線を通じて、中国で受けるのですが、かけた人は都内にかけたつもりでも受けるのは 中国・大連です。そのオペレーターとして日本人を派遣するという訳です。 この場合、例えば地元中国人の平均給与が2万円とすると、日本人には7〜8万円支払います。 もちろん日本から見れば格安ですが、中国人の平均の3〜4倍になり、現地で生活するには 十分です。加えて、中国で生活することで言葉や文化も覚えられるという算段です。
この動きが、中国から他のアジア諸国、とりわけ目覚しい発展を遂げつつあるベトナムにも波及してきています。 日本企業の進出も著しく、ホーチミン市にある「ドンズー」「さくら」といった日本語 学校も活況を呈しています。これはいわば、ノヴァとか駅前留学にあたる学校ですが、 これとはちょっと違った、日本へ派遣する人の為の日本語学校も増えてきています。 現在、中国、ベトナム等アジアの発展途上国の若者を技術研修生として日本の企業に受け入れて技術を習得してもらう という制度があります。この条件として、一定の保証金を積むことと、日本語の履修が義務付けられています。 この為の日本語学校の教師は、ハノイ貿易大学・日本語学科を卒業したようなベトナム人が中心 ですが、日本人の教師もいた方がいいのは自明です。日本で20〜25万円で生活する便利さと、 中国、ベトナムで5〜8万円で生活することによる差異を単純比較することはもとより 困難ですが、可処分所得や生き甲斐を勘案した場合、新しい選択のひとつといえるかもしれません。